こんにちは。大阪府八尾市にある医療法人甦歯会 もりかわ歯科志紀診療所です。
こどもの口が、ぽかんと開いたままになっていることはないでしょうか。人間は鼻で呼吸をするのが正常な状態であるため、口呼吸を日常的にしていると、口の周囲や全身にさまざまな影響を及ぼします。
特に、こどものうちから口呼吸が癖になってしまうと、歯並びにも影響することがわかっています。
この記事では、こどもの口呼吸が体や歯並びに及ぼす影響について、詳しく解説します。記事の後半では、こどもの口呼吸を改善する方法についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
口呼吸をしているこどもの特徴
こどもが口呼吸かどうかは、テレビを見ている時や寝ている時に、口がぽかんと開いたままになっているかで見分けられます。それ以外にも、口呼吸をしているこどもには、以下のような日常生活上の特徴や行動がみられる場合があります。
・よく口をぽかんと開けている
・いびきをかいている
・鼻がつまっている
・音を立てて食べ物を食べる
・風邪をひきやすい
・猫背などの悪い姿勢をしている
また、口呼吸をしているこどもの口腔内の特徴として、以下が挙げられます。
・歯肉が赤く腫れている
・口臭が強い
・口内炎が頻繁にできる
・唇が乾燥して、上唇だけ白っぽくなっている
・唇が乾燥しているのが気になり、よく唇を舐める
・歯並びが悪い
・前歯に着色汚れがつきやすい
・発音が不明瞭、活舌が悪い
これらの特徴が複数該当する場合、口呼吸が癖になっている可能性が高いです。
ただし、これだけでは判断が難しいため、心配な場合は耳鼻科や小児歯科へ相談しましょう。
こどもが口呼吸になる原因
こどもが口呼吸になる主な原因は、以下の3つです。
歯並びが悪い
口呼吸は歯並びに影響を与えますが、逆に、歯並びが原因で口呼吸になるケースもあります。例えば、出っ歯や受け口は、口が閉じにくくなるため口呼吸になりやすいです。
また、上顎の骨が小さいと舌を上げるスペースがないため、口が自然と開いてしまうケースもあります。歯並びや顎の骨の発達に問題があると、口呼吸になりやすいのです。
口の周囲の筋力が低下している
口の周囲には、口輪筋や舌筋などの筋肉があります。これらの筋肉がしっかりと使われず、筋力が低下すると口呼吸になりやすいです。
口輪筋は口を開閉したりする時に使われる筋肉です。口輪筋の筋力が低下すると、口を閉じたままの状態にするのが難しくなります。
舌筋は舌を持ち上げる時に使われる筋肉です。舌の正しい位置は、上顎にぴったりくっついている状態です。舌筋の筋力が低下すると、舌が下がり、口が閉じにくくなります。
口周囲の筋力の低下は、生活習慣が大きく関わっています。柔らかいものを好んで食べ続けていると、噛む時に使う筋肉が衰えてしまうのです。
こどもの頃から噛む力を身につけ、口周囲の筋肉を鍛えて発達させることが大切です。
鼻の疾患がある
花粉症やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などで鼻づまりの状態が続いている場合は、鼻呼吸がしづらいため口呼吸の癖がつきやすくなります。このような場合、まずは耳鼻科を受診して、原因となる疾患の治療をすることが重要です。
口呼吸がこどもの体や歯並びに及ぼす影響
口呼吸は口の周囲だけでなく、全身にも悪影響を及ぼします。具体的には、以下のような悪影響を与えます。
虫歯や歯周病になりやすくなる
口呼吸が習慣化すると、口腔内が乾燥し、唾液の機能が十分に働きません。唾液には、以下のような働きがあります。
・口腔内に残った食べかすを洗い流す
・食事で酸性になった口腔内を中和する
・歯の表面を再石灰化する
・抗菌作用により、細菌の増殖を抑える
唾液には虫歯や歯周病を予防するためのさまざまな作用があります。
しかし、口呼吸により口腔内が乾燥すると、唾液の分泌量が減少します。虫歯や歯周病を引き起こす原因になるでしょう。
口臭が強くなる
こどもの口臭の原因で一番多いのは、口呼吸です。口呼吸により口腔内が乾燥すると、虫歯菌や歯周病菌が口腔内にとどまって繁殖します。
口腔内の細菌が、食べ物のカスや剥がれ落ちた粘膜のカスなどに含まれるたんぱく質を分解・発酵し、その過程で生じるガスが口臭の原因となります。
歯並びが悪くなる
成長期に口呼吸が癖になってしまうと、顎の骨の発育に影響を及ぼします。こどもの顎の骨は、内側から舌で押し広げ、顔の筋肉が外側に引っ張られることで横に広がります。
しかし、口呼吸をしていると顔の筋肉が緩み、外側へ広がる力が小さくなるのです。その結果、顎の骨は横ではなく、上下方向にのみ大きくなります。
このように、面長で口をぽかんと開けて顔の筋肉の緊張が緩んでいる顔つきを、アデノイド顔貌と呼びます。顎の骨が横に広がらないと歯が生えるスペースが十分に確保されず、狭いスペースに歯が押し合って生えてしまい、結果的に歯並びが悪くなります。
風邪をひきやすくなる
人間は、鼻で呼吸をするのが通常の状態です。鼻で息を吸うときに、粘膜や鼻毛によって空気中の埃や花粉、細菌、ウイルスなどの異物を除去します。同時に、乾燥した冷たい空気を加湿し、のどや肺への刺激を少なくする役割もあります。
しかし、口で呼吸をすると、これらの機能が働きません。乾いた空気が口から直接入り、のどの粘膜が乾燥します。空気と一緒に吸い込んだ細菌やウイルスが直接気道に入りやすくなることで、風邪をひきやすくなります。
いびきや睡眠時無呼吸症候群を生じやすくなる
睡眠時に口呼吸になると、舌が正常な位置よりも奥に下がり、気道に落ち込みやすくなります。気道が舌に塞がれて狭くなると、いびきや睡眠時無呼吸症候群を生じます。
特に、こどもの頃に口呼吸が癖になると、顎が十分に発育せず下顎は小さいままです。下顎が小さく後退していると、舌も同様に後退するでしょう。いびきや睡眠時無呼吸症候群を引き起こす要因となります。
集中力や注意力が低下しやすい
口呼吸は鼻呼吸と比べると、1回の呼吸で取り込む酸素の量が少ないです。そのため、脳に十分な酸素が供給されず、集中力と注意力が低下します。
こどもの頃から口呼吸が癖になっている場合、集中力や注意力の低下だけでなく、日中のさまざまな行動や精神活動にも大きな影響を与える恐れがあります。
こどもの口呼吸を改善する方法とは?
鼻炎や副鼻腔炎などの鼻づまりが原因で口呼吸が生じている場合は、まず耳鼻科を受診しましょう。原因となる疾患の治療を優先して行います。
歯並びや噛み合わせが悪く口呼吸をしている場合は、小児歯科を受診しましょう。歯並びが原因で口呼吸となっている場合は、歯列矯正をすることで改善する場合もあります。
しかし、歯列矯正だけでなく、同時に口呼吸の習慣も改善する必要があるでしょう。口呼吸の改善には、MFT(口腔筋機能療法)が有効です。
MFTは歯並びに関係している舌や唇、頬などの口腔周囲筋の機能を改善する訓練方法で、顎の骨の発達を促します。
ここでは、こどもでもできる口呼吸の改善方法について解説します。
あいうべ体操
あいうべ体操とは、「あーいーうーべー」と口を大きく動かす体操です。口を上下や左右に大きく開けて動かすことで、舌の筋肉や口の周囲の筋肉が鍛えられ、口を閉じる筋力がつきます。
以下の①~④を10回1セットとして、1日3セットを目安に行いましょう。
①「あー」と口を大きく開ける
②「いー」と口を横に大きく広げる
③「うー」と口をすぼめて前に突き出す
④「べー」と舌を下に伸ばす
口が「あーいーうーべー」の形になっていれば、声を出す必要はありません。
口の周囲の筋肉を使った遊びをする
風船を膨らませたりシャボン玉を吹いたりする遊びは、口の周囲の筋肉を使って、息を吹き込まないとできない遊びです。このように遊びの中にトレーニングを取り入れることで、楽しみながら口の周囲の筋肉を鍛えられます。
寝るときに市販のテープを口に貼る
ドラッグストアでは、鼻呼吸へ移行させるための「鼻呼吸テープ」が販売されています。このテープは睡眠時に口に貼ることで、口呼吸から鼻呼吸への移行を促します。
また、鼻腔を広げる「鼻腔拡張テープ」も、鼻呼吸に移行するのに有効です。
鼻呼吸を意識的に行う
鼻呼吸を意識的にすることで口が閉じられ、口の周囲の筋肉を鍛えられます。歯並びに問題がなく、鼻づまりを引き起こす疾患がない場合は「口を閉じて鼻で呼吸をしようね」と時々声掛けをするだけで口呼吸が改善することもあります。
まとめ
こどもの頃から口呼吸が癖になってしまうと、歯並びだけでなく、全身にさまざまな影響を及ぼします。そのため、早いうちに口呼吸から鼻呼吸に移行させるのが望ましいです。
しかし、こどもの努力だけでは、口呼吸を改善できないケースもあります。鼻づまりを引き起こす疾患や、歯並びが原因で口呼吸となっている場合は、耳鼻科や小児歯科を受診する必要があります。
こどもの口呼吸が治らない場合は、まずは診察をして必要な治療やアドバイスを受け、鼻呼吸ができるようにサポートをしてあげましょう。
お子様の口呼吸にお悩みの方は、大阪府八尾市にある歯医者「医療法人甦歯会 もりかわ歯科志紀診療所」にお気軽にご相談ください。