こんにちは。大阪府八尾市にある医療法人甦歯会 もりかわ歯科志紀診療所です。
歯槽膿漏という言葉を聞いたことがありますか?多くの人が一度は耳にしたことがあると思いますが、口内の健康に深刻な影響を及ぼす病態です。歯槽膿漏は、より広く知られている歯周病の進行形態の一つであり、放置すると歯の喪失につながるかもしれません。
しかし、歯周病と歯槽膿漏との違い、そしてこれらを引き起こす原因については詳しくない方が多いでしょう。
この記事では、歯槽膿漏と歯周病の違い、その原因となる要素、病状を予防・治療する方法についてわかりやすく解説します。
歯槽膿漏とは?
歯槽膿漏は、歯周病の中でも特に進行した状態を指します。歯茎の腫れや出血、膿の発生、強い口臭がみられます。さらに炎症が進むと、歯を支える歯槽骨が溶けて破壊されてしまいます。
治療しなければ、最終的に歯の喪失に至ります。
歯槽膿漏と歯周病の違いは何?
歯槽膿漏と歯周病は別の病気だと思う方がいるかもしれませんが、実際には歯槽膿漏は歯周病が進行した状態を指す言葉です。両者は別の状態ではありません。
歯周病は、炎症の範囲によって二つの段階に分けられます。
初期段階は歯肉炎と呼ばれています。炎症は歯茎に限られ、赤みや出血の症状が見られる状態です。炎症が歯茎だけでなく、歯を支える骨(歯槽骨)にまで及ぶ場合は歯周炎と呼ばれます。出血や膿の発生、歯の動揺を引き起こします。
歯槽膿漏は、歯周炎がさらに進行して重篤な状態に至ったものを指します。軽度の病態では歯槽膿漏とは呼びません。
歯槽膿漏の症状
歯槽膿漏は自覚症状がほとんどないため、発覚が遅れる傾向にあります。歯槽膿漏の症状を解説するので、これらがみられた場合は早めに歯科医院を受診しましょう。
歯茎が腫れる
歯槽膿漏における歯茎の腫れは、歯周ポケット内のプラークが主な原因です。プラークの蓄積により、歯と歯の間の歯茎が炎症を起こして腫れるのです。
歯茎から出血する
歯茎が炎症を起こしていることで、出血することもあります。歯周病が進行すると歯茎が敏感になり、ブラッシングなどのわずかな刺激で出血しやすくなります。
歯茎が下がる
歯茎の下がりは、歯肉退縮と呼ばれます。歯肉退縮は、加齢や過度なブラッシング圧によって引き起こされることがありますが、歯周病も原因の一つとされています。
歯茎が下がると、歯が長く見えるようになるでしょう。普段は歯茎に覆われている歯の根本の象牙質が露出することで、飲食物やブラッシングの刺激でしみたり痛んだりすることもあります。
歯茎から膿が出る
歯茎の炎症が極めて進み、化膿している場合は、黄白色や黄緑色の粘性を持つ膿が排出されることがあります。放置すると症状はさらに悪化し、歯を失うリスクも高まります。
口臭が発生する
歯槽膿漏の進行は、強い口臭の原因となります。特に、口臭が以前に比べてきつくなったり、他人からの指摘が増えた場合、歯槽膿漏が進行している可能性が高いです。
歯槽膿漏に関連する歯周病菌が、メチルメルカプタンや硫化水素などの悪臭成分を産生するためです。これらの成分は、生ゴミや腐った卵のような不快な臭いを放ちます。
歯がぐらつく
歯茎の炎症が原因で、歯を支える歯槽骨が徐々に破壊され減少します。これにより、歯の安定性が失われ、ぐらつきを感じるようになります。
この段階に至った場合、症状の悪化や歯の喪失を防ぐために、すぐに歯科医院を受診しましょう。
歯槽膿漏の原因
歯槽膿漏の主な原因は、口腔内に生息する細菌です。
これらの細菌は主に歯垢に存在し、日々の歯磨きが不十分な場合、歯垢の蓄積が進み細菌が増殖します。細菌が産生する毒素が歯茎に炎症を引き起こし、歯周病の初期段階である歯肉炎を発症させます。
歯槽膿漏を予防する方法
歯槽膿漏の状態まで炎症が進むと、細菌や毒素が血液を介して体内の他の臓器に運ばれ、全身にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
特に、血糖コントロールを困難にするため、糖尿病が悪化することが多いです。肺炎や感染性心内膜炎など、呼吸器系や心臓疾患のリスクを高めることも知られています。
全身の健康を守るためには、歯槽膿漏を予防することが重要でしょう。具体的な方法について解説するので、ぜひ日常の口腔ケアに取り入れてください。
歯磨きを習慣づける
歯槽膿漏の予防には、適切な歯磨きの習慣を身につけることが最も重要です。正しいブラッシングを日常的に行うことで、歯垢の蓄積を防ぎ、細菌の増殖を抑えることができます。
食後すぐに歯磨きをする時間がない場合は、口をすすぐだけでも効果があります。
デンタルフロスや歯間ブラシを使用する
歯槽膿漏を効果的に予防するためには、歯ブラシの使用だけでは不十分です。デンタルフロスや歯間ブラシも併用しましょう。歯と歯の間の食べかすや歯垢を取り除くことができるため、口腔内をより清潔に保つことが可能です。
隙間が狭い場合はデンタルフロスを、隙間が広い場合は歯間ブラシを使用すると、しっかり汚れを落とせます。
定期的に歯科医院を受診する
歯槽膿漏の予防のために、3か月ごとに定期検診を受けましょう。プロフェッショナルな歯のクリーニングと検診を受けることで、口腔トラブルを予防・早期発見できます。
歯石の除去も行われるので、歯周病が発症していた場合でも病状が悪化する前に治療を開始することが可能です。歯槽膿漏を未然に防ぐと同時に、健康な口腔環境を維持できます。
禁煙する
喫煙は、歯周病や歯槽膿漏のリスクを高める要因の一つです。タバコは歯茎を含む全身の免疫機能を低下させて細菌の繁殖を促進するため、喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病になりやすいのです。
禁煙することは、歯槽膿漏を含む歯周病の予防において非常に効果的な方法の一つといえます。
歯列矯正を行う
歯並びが悪いと、食べかすが詰まりやすく清掃が難しくなります。虫歯や歯周病、歯槽膿漏の原因になるため、歯列矯正を検討するとよいでしょう。
歯列矯正により歯並びを整えることで、歯と歯の間に食べ物が挟まりにくくなります。結果として歯周病菌の繁殖リスクを減少させることができます。
歯槽膿漏の治療法
歯槽膿漏の治療法は、内科的治療と外科的治療に分けられます。軽度の場合は内科的治療だけで完了することがほとんどですが、進行している場合は外科的治療が必要になります。
内科的治療
内科的治療の内容は、以下のとおりです。
口腔内の検査
初めに、患者さまの口腔内の詳細な検査とカウンセリングを行います。歯茎や歯槽骨の状態、症状の程度、歯周炎を悪化させる可能性のある要因を把握することが目的です。
主に、歯周ポケットの深さの測定、歯肉からの出血の有無の確認、歯垢や歯石の付着量の確認、歯の動揺度の確認、レントゲン撮影による歯槽骨の状態の確認などを行います。これらの情報をもとに治療計画を立て、歯槽膿漏の治療を行います。
ブラッシング指導
歯槽膿漏の治療では、プラークコントロールが非常に重要です。日々のブラッシングで歯垢をしっかり取り除けるように、ブラッシング指導を行います。歯科医師や歯科衛生士が、一人ひとりに合わせたブラッシング方法を優しく丁寧に指導します。
口内の問題を解消する
必要に応じて、虫歯や噛み合わせの問題を解決する治療も行います。総合的なアプローチによって、歯槽膿漏の予防と治療を目指します。
スケーリング・ルートプレーニング
歯槽膿漏治療において、スケーリングとルートプレーニングは基本的かつ効果的な手法です。スケーリングでは、スケーラーや超音波スケーラーといった専用の器具を使用し、歯の表面に付着した歯垢や歯石を除去します。
続いて行われるルートプレーニングでは、歯周ポケット内の深い部分に溜まった歯石を特殊な器具で取り除きます。歯根の表面を削って滑らかにすることで、再び歯垢が付着しにくい環境を作り出します。
外科的治療
外科的治療の内容は、以下のとおりです。
フラップ手術
フラップ手術は、歯周ポケットが7mm以上ある重度の歯周病で、内科的治療で十分に改善されなかった場合に行う外科的な治療方法です。
まず歯茎を慎重に切開し、歯槽骨に付着している汚れや病変を持った歯肉を除去します。その後、清掃した部位の歯肉を元の位置に戻し、適切に縫合します。
歯周ポケットの深い部分に付着した歯石を除去し、歯槽骨の健康状態の改善を図ります。
歯周組織再生療法
歯周組織再生療法は、歯槽膿漏によって溶けてしまった歯槽骨を再生するための治療方法です。減少した歯茎や顎の骨を再生し、歯を残すことを目指します。
GTR法
GTR法は、歯周病によって破壊された骨や組織の再生を促す治療法です。通常、骨の回復速度よりも歯茎の回復速度のほうが早いため、何も対策しなければ骨が回復するためのスペースを歯肉が奪ってしまいます。
再生が遅い骨を保護して適切に回復させるために、GTRメンブレンと呼ばれる特殊な膜で損傷部位を覆う治療が、GTR法です。膜が健康な歯周組織の再生を促しながら、不要な組織の侵入を防ぎます。
エムドゲイン法
エムドゲイン法は、歯周病によって破壊された歯周組織の再生を促進するために開発された治療法です。この方法では、エムドゲインゲルという特殊なタンパク質を使用します。
破壊された歯周組織に直接エムドゲインゲルを塗布することで、新しい歯槽骨やセメント質、歯周靭帯の再生を助け、歯槽膿漏の進行を抑えるとともに健康な歯周組織を取り戻します。
まとめ
歯槽膿漏は、歯周病の進行形です。歯周ポケットの深化、歯肉の腫れや出血、強い口臭、歯のぐらつきなどの症状を伴います。主な原因は口腔内の細菌で、不適切な口腔衛生が症状を悪化させます。
予防策としては、正しい歯磨きの実践、デンタルフロスや歯間ブラシの使用、定期的な受診、禁煙、歯列矯正を含む生活習慣の改善などが効果的です。治療方法は、病状の重さに応じて選択されます。
歯槽膿漏でお悩みの方は、大阪府八尾市にある歯医者「医療法人甦歯会 もりかわ歯科志紀診療所」にお気軽にご相談ください。