こんにちは!大阪府八尾市で60年!地域に根ざした歯医者、医療法人甦歯会 もりかわ歯科です。
歯の健康に関して気なることや、歯にまつわる体のお悩みなどは人それぞれ、千差万別です。歯科医師やスタッフが歯科知識として理解していることでも、患者さまにとっては疑問や不安になってしまうのだと、気づかされてはっとすることも度々あります。できるだけ多くの質問に詳しくお答えできればいいのですが、診療中に個々の患者さまに詳しくご説明する時間が限られていることが多いのが実状です。
そこで、「歯に関するご質問に全力回答!」ブログをスタート! 普段の診療中にご質問いただく内容について、この場で詳しく解説していくことを目的として掲げ、出発したブログです。このブログが、歯医者に対して患者さまが日頃抱えている疑問や不安の解消への近道になれば、と願ってやみません。
どんな些細な疑問や質問でも、お気軽にお寄せください! 患者さまの健康としあわせを支えることが私たちの役目です。どうぞよろしくお願いいたします。
フッ素って虫歯予防にいいの?
今回はフッ素のお話です。皆さまも「フッ素」というと、普段使われている歯磨き剤のパッケージに書かれていたり、CMなどで耳にしたりしたことがあると思います。最近では国内各地の河川や水道水などから高濃度の有機フッ素化合物が検出されたとか、WHOが発がん性の評価を引き上げたとか、ニュースでもお聞き及びかもしれません。そこで今回は、「フッ素配合?」「歯磨き剤に入ってるフッ素と有機フッ素化合物は違うものなの?」など、そんな疑問や不安にもお答えしていきたいと思います!
そもそもフッ素って何?
フッ素は周期表の17番目の元素で、化学記号はFです。無色・無臭の気体であり、高い電気陰性度を持っています。主に歯科の領域で、「歯のエナメル質を強化し虫歯の予防に役立つ」として知られています。歯磨き剤やマウスウォッシュにも配合されています。また、工業や医薬の分野でもさまざまな製造に関与するなど、総じて、フッ素は歯の保健や産業プロセスにおいて重要な役割を果たしています。
また、歯科の領域で使用されているフッ素は、主にフッ化ナトリウムなどで、「無機フッ素化合物」と呼ばれるもので、問題の「有機フッ素化合物」とはまったく別のものです。
フッ素はなぜ虫歯予防になるのですか?
フッ素が虫歯予防に効果がある主な理由は、以下の通りです。
エナメル質の強化
フッ素は歯のエナメル質を強化する作用があります。エナメル質は歯の表面を覆っている硬い層で、酸や細菌などから歯を守る役割を果たしています。フッ素がエナメル質に取り込まれることで、より強固な表面を維持できます。
歯の再石灰化
歯を構成するミネラル質を再び歯の表面に取り込むプロセスのことを再石灰化といい、これによって歯の硬さと強度が増します。
細菌の成長抑制
フッ素は歯の表面に付着した細菌の成長を抑制する効果があります。虫歯の主な原因は、口内の虫歯菌によって作られる酸によるものです。フッ素はこの虫歯菌の活動を抑え、虫歯の発生リスクを減らします。
歯石の形成阻止
フッ素は歯石の形成を阻止する効果もあります。歯石は歯の表面に細菌やプラークが堆積して硬くなったもので、歯ブラシなどで十分に取り除くことが難しくなります。フッ素はこの歯石の形成を妨げ、口の中の清潔を維持します。
このように、フッ素は虫歯の予防に効果的で、歯の健康を維持するのに役立つのです。
フッ素は虫歯になった歯にも効果があるの?
はい、初期の虫歯に効果があります。フッ素は初期虫歯の修復、つまり「再石灰化」と呼ばれる現象を効果的に促進します。初期虫歯は歯の表面が酸により傷ついている状態(脱灰)です。これが進行すると、表面が崩れて穴の開いたむし歯になる可能性があるのですが、フッ素によって再石灰化が活性化することにより、傷ついた歯の表面が修復され、虫歯の進行を防ぐこともできます。
フッ素で虫歯は治せますか?
前述の通り、フッ素は初期の虫歯を修復し、進行を抑制する効果があります。ですが、進行が進んでしまった虫歯に対しては、フッ素だけでは効果が限定的であり、歯科医の治療が必要となります。歯科医は、虫歯の進行具合に応じて適切な治療法を提案し、虫歯を治療するプロセスを進めます。フッ素の使用はあくまでも予防的な側面で重要で、歯の健康維持を助けるものです。
フッ素は歯のエナメル質を再生しますか?
フッ素は歯のエナメル質を再生するわけではなく、再石灰化と呼ばれるプロセスを促進し、エナメル質の表面を強化する役割を果たします。再石灰化は、歯の表面に微小な損傷が生じたとき、ミネラル成分を歯に戻すプロセスのことですが、つまりフッ素による再石灰化とは、フッ素イオンが歯のエナメル質の結晶構造に結合することなのです。こうして、歯のエナメル質が強固になるというわけです。
フッ素を使う時に気をつけなければいけないことはありますか?
このようにフッ素は歯科などで効果的に利用されていますが、注意が必要な点ももちろんあります。以下はフッ素の注意点です。
適切な濃度の使用
フッ素を過剰に摂取すると健康に悪影響を与える可能性があります。歯磨き剤やマウスウォッシュなどの製品に含まれるフッ素濃度は指定された使用量を守りましょう。
小児への摂取管理
特に小児は成長段階にあり、過剰なフッ素摂取は歯や骨の発育に悪影響を及ぼすことがあります。小児用の歯磨き剤などは、年齢に応じた適切な濃度を選ぶことが重要で、2023年1月に歯磨き剤のフッ素濃度の推奨基準が変更されたりもしました。
斑状歯
高濃度(適量の2〜3倍ほど)のフッ素を、成長期(あごの骨の中で歯がつくられる時期)に継続的に摂取することによって、エナメル質の色や形態に異常が起きることです。歯の表面に白斑や白濁、または縞模様が出たり、重症の場合は歯の一部が茶色くなったり穴が開いたりすることもあります。
適切な歯科ケア
フッ素の使用は歯科ケアの手段として適していますが、歯の清掃や歯医者の定期検診も重要です。フッ素だけでなく、総合的な口腔ケアが歯の健康に寄与します。
アレルギー反応
一部の人々はフッ素に対してアレルギー反応を示すことがあります。歯磨き剤やマウスウォッシュなどを使用する際に、異常な反応があれば医師に相談しましょう。
とはいうものの、フッ素の利用は総じて歯の健康維持に役立つもので、使用量や濃度などに十分注意して適量を使用するなら、いたずらに怖がる必要はありません。心配な場合は歯科医に相談して、適切な用量・用法を確認してくださいね。
フッ素は塗ったほうがいいのでしょうか?
フッ素の塗布は歯の表面にあるハイドロキシアパタイトと呼ばれるエナメル質の主成分に影響を与え、その結晶構造を強化・修復します。このプロセスにより、酸に対して強固で丈夫な歯になります。特に、乳歯や新しく生えた永久歯はフッ素を効果的に取り込みやすいので、小児期に定期的にフッ素を塗布することはたいへん有効です。これによって歯の健康を維持し、虫歯の発生を予防する効果が期待されます。
フッ素は何歳ぐらいまでに塗ると効果的なんですか?
フッ素の塗布が小児期に効果的なのは確かですが、具体的な適正年齢については、個々の子どもの歯の状態や成長によって異なります。一般的なガイドラインとしては、乳歯が生え始めた頃から永久歯が発育し終わるまでが、フッ素の塗布にとりわけ有益な時期とされています。
おおよそ6歳から16歳の間
歯科医師は子供が6歳から16歳の間にフッ素の塗布を勧めることがありますが、この期間がまさに永久歯の発育が進む時期で、フッ素によって歯のエナメル質が強化され、虫歯の予防に高い効果が見込めるからです。
具体的なスケジュールは歯科医や子どもの歯の状態により異なるため、子供の歯科健康に関する相談はぜひ歯科医になさってください。歯科医は子どもの歯の状態を評価し、最適な時期と頻度でフッ素の塗布を勧めることができます。
フッ素塗布は大人にも効果がありますか?
大人の歯においてもフッ素塗布が効果的な理由はいくつかあります
歯の再石灰化
歯が酸によって傷つく(脱灰)のは大人でも同じです。フッ素は歯のエナメル質に働きかけ、再石灰化を促進します。これにより、歯の表面の小さな損傷や脱灰を修復し、歯を強化します。
歯の耐久性向上
大人ならではの生活習慣や飲食習慣により、歯が酸や細菌の影響を受けることがあります。フッ素は歯の結晶構造を強化し、酸に対する耐性を向上させる効果があります。
歯周病の予防
フッ素は歯周病の予防にも寄与します。歯周病は歯の周囲の組織に影響を与えるため、歯を健康に保つためにもフッ素の利用が有益です。
歯石の防止
フッ素は歯石の形成を防ぎ、歯の表面を清潔な状態に保つことも期待されます。
大人の歯においても、歯科医の指導のもとでフッ素の塗布が行われることで、歯の健康維持が期待できます。歯の状態に合わせた適切なケアを、ぜひ歯科医にご相談ください。
どのぐらいの頻度で塗るのがいいんでしょうか
塗布したフッ素の効果はおおよそ3〜4カ月持続すると言われています。
フッ素塗布の頻度は、患者さまの歯の健康状態や抱えているリスクによって異なります。歯科医師が患者さまの状態を評価し、最適なスケジュールを提案しますが、一般的なガイドラインに基づいて以下のような頻度が考えられます。
子供(乳幼児から青年期)
通常は歯の発育が進む期間において、6ヶ月から1年に1回の頻度でフッ素塗布が行われます。
成人
成人の場合は、通常は1年に1回のフッ素塗布が一般的です。
リスクが高い場合
虫歯のリスクが高い場合や特定の歯の状態に問題がある場合は、個別のケースとして、歯科医から最適なスケジュールを提案させていただきます。フッ素塗布も含めた予防歯科については、もりかわ歯科ホームページの診療メニュー「予防歯科」もぜひご覧ください。
フッ素を塗りすぎると歯が白くなるって本当ですか?
一般的に、適切に適量を使用していれば、歯が白くなりすぎたり、まだらになることは少ないです。また歯の表面に変色が生じる可能性があるのは、フッ素を過剰に使用した場合です。これは「フッローシス」と呼ばれ、以下のような症状が現れることがあります。
白斑症(White Spots)
歯の表面に白い斑点が現れることがあります。これは歯のミネラル損失によって引き起こされます。
まだらな変色
過剰なフッ素使用により、歯の表面がまだらに変色することがあります。これはフッ素が歯の結晶構造に影響を与えた結果です。
これらの症状は通常、フッ素の過剰な摂取や長期間にわたる過度のフッ素使用が原因で引き起こされます。一般的な歯磨き粉やマウスウォッシュを通常の使用量で利用する限り、こういった症状を心配する必要はありません。フッ素製品の使用量や濃度に関しては、商品の取り扱い説明書や歯科医との相談が重要です。
歯磨き剤はフッ素入りがいいですか?
歯科用フッ化物配合歯磨剤(しまざい/歯磨き剤のこと)は、毎日の歯みがきでフッ化物を効果的に供給できるため、虫歯予防に重要な役割を果たします。世界保健機関(WHO)は、フッ化物配合歯磨剤の使用を、すべての人に推奨しています。
多くの国々では、フッ化物配合歯磨剤が市場シェアの90%以上を占め、圧倒的な数の人々に活用されています。先進国では、この過去30年で虫歯の大幅な減少が見られており、その要因として「フッ化物配合歯磨剤が普及したこと」が挙げられています。
日本では、フッ化物配合歯磨剤は医薬部外品として規定されており、フッ化物の配合成分としてはフッ化ナトリウム(NaF)、フッ化スズ(SnF2)、モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)の3種類が認可されています。これらの成分は、濃度が1,000ppm(0.1%)以下に規制されています。
フッ素うがいもいいって聞いたけど?
正しくはフッ化物洗口(ふっかぶつせんこう)といいます。
学校などでの集団実施
フッ化物洗口は保育園、幼稚園、小中学校で集団で実施されてもいます。一定濃度のフッ化ナトリウム溶液(5~10ml)を使用し、1分間のブクブクうがいをする方法で行われていますが、永久歯の虫歯予防に効果的です。この方法は、第一大臼歯が生え始める就学前から始め、だいたい中学生まで継続します。
家庭での実施
歯科医院で購入できる洗口剤(同250ppm)や薬局で購入できるOTCフッ化物洗口剤(同225ppm)を用いて毎日1回行います。
フッ化物洗口は大人にもいいの?
はい、成人においても隣接面むし歯や根面むし歯の予防に効果的です。寝ている間は唾液の分泌量が減り、フッ素が長時間口内に留まることができるので、フッ化物洗口は就寝前がおすすめです。
フッ素洗口液って危なくないの?
適切な量の使用であれば危なくありません。フッ化物洗口に利用されるフッ化物の濃度は、体に影響が出ない程度に調整されています。また、万が一洗口液を飲み込んでしまっても、急性中毒の心配はありませんし、正しい容量・用法での継続使用ならば、副作用の心配もありません。
フッ素を塗った後やフッ素うがいの後、食事はしてもいいですか?
30分は飲食をひかえてください。これは、口の中にフッ素が残りやすい状態を維持することが目的です。そうすることで、フッ素が歯の表面に、より効果的に吸収され、再石灰化や虫歯の予防効果を最大限に引き出すことが期待されます。せっかくのフッ素を飲んだり食べたりすることで流してしまわないようにすることが大切なのです。
アメリカ人は虫歯にならないのはなぜ?
アメリカなど多くの国々では水道水にフッ素が添加されていて、これが虫歯予防につながっているとされています。この取り組みは公共衛生の一環として行われ、水道水中のフッ素が歯の健康に役立つことが確認されています。水道水中のフッ素濃度が適切であることにより、歯科保健の向上と虫歯の発生率の低下が期待されています。
フッ素はドイツで禁止されているのですか?
ドイツでは一般的には水道水にフッ素を添加してはいませんが、フッ素の使用に関する法的な禁止はありません。ドイツに限らず、各国の水道水へのフッ素の添加に関する方針は異なるため、国ごとに異なる取り決めや基準が存在しています。ちなみに日本では全国的に水道水にフッ素を添加する計画は今のところ存在していません。
フッ素の摂取で骨粗鬆症になるかもって聞きました
フッ素と骨粗鬆症については、適切な摂取量であれば一般的には関連性が低いとされています。むしろ、適切な量のフッ素摂取は骨にとってもプラスに働きます。骨粗鬆症のリスクにつながるとすれば、やはり過剰で不適切に摂取した場合です。
適切なフッ素摂取と骨の健康
フッ素はフッ素は、骨の形成に必要なカルシウムとリンの吸収を促進し、適切な量なら骨を強化する効果があります。歯科保健の一環として、水道水や歯磨き剤にフッ素を添加することで、歯や骨の健康を促進しています。
過剰なフッ素摂取と骨粗鬆症などのリスク
フッ素を過剰に摂取すると、骨の形成が促進されすぎ、骨が硬くなりすぎてもろくなる可能性があります。また、フッ素は骨の破骨細胞の働きを抑制します。破骨細胞は、骨の再構築を行う細胞です。フッ素を過剰に摂取すると、破骨細胞の働きが抑制され、骨の再構築が妨げられる可能性があります。
過剰にフッ素を摂取してしまう原因
フッ素の過剰摂取が生じる主な原因としては、地下水や井戸水など自然な水源からの高濃度のフッ素が摂取されることが考えられます。一般的に、通常の飲料水や歯科製品からのフッ素摂取では、このようなリスクはほとんどありません。
フッ素は癌になりますか?
一般的な水道水や歯磨き剤、歯科製品からのフッ素の摂取が適切な量である限り、がんのリスクが増加するという科学的なエビデンス(根拠やデータ)はありません。とはいえ、フッ素の過剰な摂取は健康に悪影響を与える可能性があります。
一部の地域では自然水源から高濃度のフッ素が含まれている場合があり、これが慢性フッ素中毒を引き起こすことが報告されています。しかし、通常の水道水や歯科用製品からのフッ素摂取では、健康に対する重篤な影響はほとんど見られません。
まとめ
いかがでしたか? おおまかに言って重要なのは、「フッ素は歯科の健康に効果がある」「適切に使用していればフッ素は危険ではない」の2点です。これだけ抑えておいていただければOKですので、患者さま個々の健康状態などに応じて「どう使用すれば効果的」で、「適量はどのぐらいなのか」などは、ぜひ大阪府八尾市にある歯医者、もりかわ歯科までご相談ください。もりかわ歯科では、予防歯科にも力を入れております。転ばぬ先の杖となり得るフッ素を上手に使って、お口の中の健康を守りましょう。
歯にまつわることならどんなことでもご質問にお答えしたいという熱い思いで書いているこのブログが、患者さまの不安を拭えたならばこんなに嬉しいことはありません。